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雇用多様化と社員教育
 先日小泉首相が施政方針演説で、雇用を分かち合うという観点からのワークシェ
アリングの実施に向けて検討を行うとともに、より柔軟な働き方が選べるよう、雇
用期間や労働時間に関する制度の見直しについて、検討を進めると述べたことも含
め「ワークシェアリング」という言葉が色々なところで聞かれるようになりました。
 「ワークシェアリング」と言う言葉を聞くと、私事で恐縮ですが、私は今から10
何年前、大学のゼミで「人口問題」を専攻し、卒業論文で、ワークシェアリングの
必要性について書いてことを懐かしく思い出します。正直なところ、大学時代あま
り勉強していたとは言えませんので、卒論を仕上げるのに苦労したことを覚えてい
ます。私の卒論では、人口問題の観点、高齢化社会の到来、生産年齢人口の減少か
ら、国全体の生産力を維持・増強していくためには、定年制延長が必要であり、定
年制延長を実現させる一つの方法として、ワークシャアリング、タイムシャアリン
グが推進されるような社会基盤の整備が必要だ…と言うような内容だったと思いま
す。今頻繁に使われている雇用維持のための「ワークシャアリング」とは、あまり
にも目的、背景が異なるため、改めて時代の流れを感じます。

 ワークシェアリングの導入にかかわらず、雇用形態が多様化していく流れは、こ
れからもますます進んでいくことが予想されます。先日の厚生労働省の調査でも平
成9年〜13年にかけて、正社員が170万人減少する一方で、パート等非正社員は
200万人増加するなどますます正社員の減少と雇用の多様化の流れは間違い無く
加速しています。
 以前は正社員だけ、正社員の比率が圧倒的に多かった職場でも、様々な雇用形態
…契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど…の方が働いていることは珍しく
ありません。

 多様化する雇用形態の中で、社員教育も発想の転換が必要になります。社員教育
=「正社員を対象とした教育」という考え方では、ますます対応できない問題が多
くなってきます。これは従来型の階層別教育がますます非効率になってくることを
意味します。管理職、中堅社員など、役職や職位は同じでも、職場環境が全く異な
るケースが増え、役職、職位に共通する教育を実施しても、効果が現れにくくなっ
てきます。階層別教育を全て否定するわけではありませんが、役職、職位に共通し
て必要なスキル、知識を身につけるための時間、費用、方法は柔軟に見直す必要が
あると言えます。

 これからは「階層、役職、職位」を前提に教育を考えるのではなく、むしろ「使
命・機能」を中心とした教育づくりがますます必要になると言えます。〇〇会社が
提供する、〇〇部が提供する、〇〇課が提供する「使命・機能」など、企業、部門、
チームなどそれぞれの単位で求められる使命・機能を明確にし、その使命・機能を
十分に発揮するために「どんな教育が必要か」「誰を教育することが必要か」を考
えることがより大事になってくると言えます。


             (2002/02/11 人材開発メールニュース第174号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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