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人材開発の専門性
 以前からこのコラムに何度も書いていますが、私は企業内教育とはコミュニ
ケーションであると考えています。教育することは、個々の人材に対して、企
業、組織として期待すべきことがあり、そのことにコミットメントする、コミッ
トメントさせることが目的であると思われます。何らかの知識、スキルを身に
つける教育においても、知識、スキルを身につけることによってコミットメン
トしやすい環境を作り出していると考えることができます。
 教育(コミュニケーション)において、教育(コミュニケーション)できた
かどうかは、その行為が相手に理解されたか、相手がどういう行動を起したか
ということが重要になります。当たり前ですが、一方向ではなく双方向で検討
しなければならないと言えます。

 年末が近くなるにつれて、今期の教育計画の振り返りや来期の教育の見直し
を進めている人材開発担当者の方も多いのではないでしょうか。
企業規模が大きい企業であればあるほど、以前に比べ人材開発担当者の専門性
は高くなり、スタッフ一人一人のレベルは高いと感じることは確実に増えてい
ます。専門性が高くなるにつれ、研修で取り入れられる教育技法なども確実に
進化しているように思われます。

 しかし、その一方で最近、研修が難しくなりすぎている感じを受けることが
多くなったような気がします。受講者に対し様々な技法を駆使して、トレーニ
ングしたいと気持ちはわかるのですが、受講者の消化レベルを超えて、どうい
うプログラムでやったか、どのぐらい新しいことを取り入れたかに議論が終始
している感じを受けることもあります
 恐らく始めは、受講者の理解促進を図るために様々な企画を色々と検討して
いたと思われます。しかし、企画する過程において様々な情報が入手される中
で、いつのまにか受講者よりもテクニック的が先行している、と言うようなこ
とも多々あるような気がします。
 例えば、人材開発担当者の方とお話をさせていただく時に、「当社ではこう
いうことに取り組んでいる」と熱心に説明いただくことがあるのですが、その
研修を受けている受講者の顔が見えないと言うケースがあります。中には(勿
論言葉には出されませんが)、「人材開発部門でこれだけのプログラムを揃え
て実施しているのだから、レベルアップできないのは個々人の問題だ」みたい
な雰囲気で、お話をされる方もいらっしゃいます。高いプロ意識やこだわりは
評価できるのですが、やはり研修においては受講者の反応があって評価される
と考えるほうが適切だと思われます。
 研修の評価は、受講者の反応ですべてが決まるとは言いきれない部分もあり
ますが、受講者の理解促進、行動変革へのきっかけ作りが重要なことは言うま
でもありません。

 多くの企業で、人材開発部門は専門性の高さを要求され、これからもますま
すその傾向は高まると思われます。
ただ間違えてはならないいのは、専門性の高さは、知識・スキルの高さでなく、
個々の人材に対して、企業、組織として期待すべきことをどうコミットメント
させたかと言う点で評価しなければないということだと思います。勿論このこ
とは、企業内の人材開発担当部門限ることでなく、私どものような人材開発サー
ビスを提供するものにとっても重要なことです。
 教育体系を見直すこの時期に、もう一度現場を振り返ることも大事ではない
でしょうか。


             (2001/11/26 人材開発メールニュース第164号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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