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研修レポートを評価する場合の注意
 研修終了後に、研修内容の感想などを記入させる研修レポートは、今でも研
修の効果測定を行う方法の一つとして様々な場面で活用されています。
 ここに2つの研修レポートがあるとします。1つは、受講者全員が、今回の
研修でここが役立つと答えた部分がほぼ同じ内容の研修レポート(しかも指摘
した部分は、研修のねらいとして考えていたもの)。もうひとつは、受講者個々
人がここが役立つと答えた部分がバラバラの研修レポート。どちら研修が効果
があったのでしょうか。

 恐らく前者の方が良い研修であると思われる方が多いと思います。しかし、
実際はこのような考え方が間違っていることもあります。
 研修を実施する場合には、必ずねらいや目的があります。研修レポート(感
想文)を書かせる立場、すなわち講師や研修事務局側から見れば、受講者が研
修レポートの中で、どれだけ研修のねらいや目的について記述されているかに
着目する必要があります。そういう意味では、受講者全員が研修のねらいの部
分について、まとめているのは非常に大事なことです。

 しかし、もう少し深く見ると、どういう言葉で書かれれいるかと言うことも
注目すべきポイントです。講師の言葉で書いているのか、自分の言葉で書いて
いるのかを見極める必要があります。恐らく全員が同じような研修レポートを
書いてくる場合は、講師の言葉でまとめられていることがほとんどです。研修
中に大事だと言われた内容を、レポート上で忠実に復元しているような状態で
す。勿論、これはこれで大事なことですが、受講者の理解度から考えれば、研
修を通して学習したものが、知識として「わかる」というレベルであり、現場
に戻って「できる」というレベルであるかどうかは、疑問符をつけざるを得ま
せん。

 一方、自分の言葉で書かれた研修レポートは、勿論内容が、的外れなもので
ある場合は論外ですが、研修内容を踏まえた上で記入されているものは、書き
方の上手い下手ではなく、自身の環境に置き換えてイメージしているという点
では、より行動レベル、「できる」レベルでの変化が期待できます。自分の言
葉で書かれている場合は、やはり受講者各人を取り巻く環境もそれぞれ違いま
すし、また問題意識のレベルも違いますので、結果レポート内容がバラバラに
なるケースが多くなります。

 研修を企画・運営する側のスキル、受講者の聞く、書くスキルが向上する中
で、上手に(的確に)進める講師、上手に(的確に)聞き分ける受講者、上手
に(的確に)書かれた研修レポート、私自身の周りを含め、そういう雰囲気を
感じる研修が多くなっているように感じることも増えています。一見何も問題
が無いように思えますが、ヒトの部分が見えずに、無味乾燥であれば、やはり
研修の成果は期待できません。自分の言葉で書かれた研修レポート、受講者各
人がそれぞれのおもしろいとか、新しく発見した部分がバラバラの研修レポー
トが多い方が、より受講者に影響を与えた研修であるような気がします。

 おそらく多くの企業、企業内研修で受講者の研修レポートが記入されている
と思いますが、研修のねらいや目的をどれだけ理解しているかで評価するだけ
でなく、どれだけ講師が説明した言葉で無く、自分の言葉で書かれているかを
見直すことで、研修を再評価したり、見なすことが必要であると言えます。


             (2001/04/09 人材開発メールニュース第133号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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