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営業管理手法−ABC管理
 営業管理を行う方法として、ABC管理という方法があります。営業を展開
していく上で、顧客を過去の実績や取引の拡大をねらいたいという視点から、
ABCランク付けし、計画的かつ効率的な営業展開を図るというものです。A
BC管理は、新規開拓および既存深耕のいずれにおいても、有効な方法と言え
ますし、また営業の場面に限らず、色々な場面で活用されています。
 営業活動、営業管理サイクル(Plan−Do−See)という中で、AB
C管理は有効な方法であると言えますが、どちらかと言うとこの方法は、訪問
件数、訪問時間など活動量を管理することには、向いていますが、営業活動の
質的な管理については、これだけでは不十分なような気がします。

 ABC管理に少し質的な側面を加える方法として、顧客基準によるABC管
理に顧客担当者基準のABC管理を組み合わせるという方法があります。顧客
担当者基準のABC管理とは、商品・サービスを利用する顧客の意思決定(決
裁)レベルによってABCランク付けするというものです。Aランクの人は、
決定権(最終決裁する)を持つ人であり、Bランクの人は最終決裁権を持つ人
に提案できる人であり、Cランクの人は意志決定プロセスに情報を提供する人
というイメージです。利用しようとする商品・サービスにより決定権を持つ人
は異なりますので、営業案件毎に見直す必要があります。

 顧客のABC、担当者のABCを組み合わせると、それぞれ、顧客A−担当
者A、顧客B−担当者A、顧客C−担当者A、...など合計9つのマトリッ
クスができあがります。営業活動をこのマトリックスの中に入れて考えると、
顧客基準だけのABC管理とはまた違った見方ができるのではないでしょうか。
例えば、重要度の高い顧客(Aランク顧客)に頻繁に営業すると言っても、担
当者レベルがCであれば、有効な営業活動を行っているとは言えません。また、
全体の営業活動量における、担当者ABCごとの接触(訪問)比率などを見る
と、営業活動の質的側面がかなり見えてきます。

 顧客担当者基準のABC管理の利点は、まず、顧客の意志決定プロセスを見
直すきっかけになるということです。顧客の意志決定プロセスは明示されてい
るものではありません。従って、営業を仕掛ける側から言えば、仮説−研修と
いう作業が必要になります。改めて顧客の意志決定プロセスを探ると、間違い、
思い違いを発見することも多々あります。特に法人向け営業では最近、組織の
フラット化など、顧客の意思決定プロセスが目まぐるしく変化している場合が
多いようです。
 もう一つの利点は、より上位の決定権者に会うためプロセスが営業の質の向
上をもたらすということです。より上位の決定権者に会うためには、また検討
してもらうためには何が必要かを考えることで、不足している情報が見えてき
たり、営業上の課題を発見することができます。

 いずれにせよ、営業活動は、顧客の意思決定プロセスにいかに影響力を与え
ることができるかということが重要です。売れないと言うことは、顧客の意思
決定に影響を与えていないと言うことです。顧客の意志決定には、様々な要素
がありますが、決定権を持つ人に確実に情報を提供しているかを見直すことで、
新たな糸口が見えてくるのではないでしょうか。


             (2001/02/12 人材開発メールニュース第125号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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