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人材像が描けない?
 年末が近づき、今年や今世紀の総括や来世紀への展望などがいろんなところ
で話題になっていますが、企業経営を取り巻く環境について言えば、景気の回
復が期待されるなど楽観的な観測も流れていますが、なかなか実感が無いなと
思われている方も多いのではないでしょうか。聞き飽きた言葉ではありますが、
「先行きが見えない時代」と言われて久しくなります。

 人材開発の現場でも、まさに同じ様な現象が起こっています。人材開発を進
めるにあたって、目的や目標や必要な人材像が必要なのは十分理解しているが、
会社にとって必要な人材像がイメージできないと言うケースが増えています。
教育担当部門からだけでなく、特に最近では経営幹部の方々からそういう話を
聞くケースが増えています。本音に近い部分で聞けば聞くほど、具体的に描こ
うとすればするほど、わが社の「コア人材」のイメージがはっきりしないとい
うこと打ち明けられるケースがあります。

 これは、人材開発に限ったことではなく、企業経営の全て機能および意思決
定で同様なことが言えます。現状に危機感を持っているが、先行きが見えない
ために、どこに投資をしていいのかわからない。投資をしたとしてもそれに見
合う成果が得られる保証はないので、新しいこと、思い切ったことを使用とす
ればするほど、意志決定が慎重にならざるを得ない。結果的に大規模な投資が
できない、というのが多くの企業の現状だと言えます。

 前述の「コア人材」のイメージができない話に戻しますと、そう言いながら
も企業内で人材育成を行っていくためには、やはり会社が求める人材のイメー
ジが必要なことには間違いありません。また必要な人材像については、全くイ
メージが無いと言うよりも、漠然としたイメージはあるが具体的ではないとい
うことも多いと言えます。そういうケースでお悩みの場合は、下記のような考
え方を参考にしていただければ、よりいいものができるのではないでしょうか。

1.「必要な人材」ではなく「好きな」「いいな」という人材を考える
 必要な人材というよりは、「こういう人材がいいな」というレベルで発想し
た方が、よりアイデアが増えます。多くの場合、「必要な」という場合、言葉
のニュアンスが限定的であったり、断定的であったりします。特に会社として、
公式な形で「必要な人材像」を作り上げようとした場合には、作業をしてる段
階で、必要以上に難しく考えるケースも多いようです。特に経営トップに近い
方であれば個人の持つ人材観が会社で要求する人材と極めて近くなりますので、
「必要か必要ではない」というよりも「好きな」、「いいな」というレベルで
人材を考えられた方が、より多くのアイデアが持つことができます。

2.できるだけまとめない
 「必要な人材像」を打ち出そうとすると、最終的には多くのアイデアからま
とめて文書化するというのが通常のパターンです。このケースに限ったことで
ありませんが、文章としてまとめる場合、いくつかの項目に収斂されたりこと
で、かえって抽象的になることが多々あります。文書化する作業を否定するわ
けではありませんが、抽象的でわかりにくくなる場合は、かえってまとめない
方がいいこともあります。最終的に「必要な人材像」は社員全員が共有するこ
とが必要になります。文書化しないということは、違った見方をすれば、文書
として配るのではなく、直接歩いて話して回るということを意味しています。
社員に文書として情報を提供するよりも、自分自身の言葉で説明した方がより
深い理解を得られます。会話を重ねる中で、最終的に文書として残すものを決
めていくこともできますので、最初から文書として配るよりも、まずは思って
いることを話して、理解度を含め反応を見ることも大事ではないでしょうか。


             (2000/12/11 人材開発メールニュース第117号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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