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システム(仕組み)の導入と人材開発
 IT革命が進む中で、企業規模の大小を問わず様々な業務システムや情報シ
ステムが導入されています。その一方で導入当初に考えていた効果が本当に得
られているのかいうことに疑問を持っている企業も少なくありません。
 システム万能主義と言うことではありませんが、システムを入れれば...
と考え、導入したものの、実際の現場では、その機能のごく一部しか活用して
いないというケースも多いようです。そのため、システム導入後に再度システ
ムを活用するための教育が実施されるケースが増えています。

 システム活用の教育も大別すると二つあると言えます。一つは情報機器の操
作方法などの習得を目的とした情報リテラシー教育。もう一つは、情報システ
ムを導入する、または活用するにあたり業務そのものを見直すための業務系の
教育と呼ばれるものがあります。特に最近では、後者のアプローチが徐々に増
えてきているような感じを受けます。
 ある企業では、営業の現場において、システム(仕組み)が整備され、様々
な営業に関する情報が入手できるようになりました。そのため、営業マンは入
手された情報を顧客に対して提示するだけの営業スタイルが目に付くようにな
りました。システムから出されるデータに偏重しすぎて、その結果、営業の基
本的なスキル、自ら商談を考える力や構成する力が低下しているのではないか
と危機感を感じています。その企業では、現在、営業の基本的なトレーニング
を再度行い、営業に活かすシステムの利用方法を模索しています。

 当たり前のことですが、システム(仕組み)の成果は、システム(仕組み)
のレベルと運用する人材のレベルの両者を併せて考えることで始めて予測が可
能になります。
 自社の戦略や人材を充分に分析した上で、システム(仕組み)に必要な事と
運営する人材に必要な事をそれぞれ分析し、どういうシステムにするか、運営
する現場ではどのような人材が必要かを両面から考えることが必要になります。
逆説的な言い方をすれば、システムと人材が別々に考えられているケースがま
だまだ多いのではないでしょうか。
 今後、システムの導入には「自社の戦略や業務に合った」、「身の丈に合っ
た」という考え方が益々重要になるかと思います。IT革命の進行とともに、
ERPやASPなどの導入を検討する機会が今後ますます増えることが予想さ
れます。ERPやASPを使いこなすために「自社らしさ」をどこに打ち出す
のかが非常に重要なポイントになるかと思います。

 いずれにせよ、ITを含めたシステム(仕組み)は道具すなわち手段です。
目的は現状の業務遂行をより効率、効果的に進めることであると言えます。シ
ステムの導入後に生じた問題に対するアプローチは当然必要ですが、まだまだ
後手に回っているという感じは否めません。もう少しシステムの導入の前に、
仕組み(システム)を変える部分と運用する人材に付加する部分の両面から、
計画的に進めることが必要ではないでしょうか。


             (2000/10/23 人材開発メールニュース第110号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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