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キャリアカウンセリングへの期待−2
 以前このコラムで「キャリアカウンセリングへの期待」ということについて、
書きました。その時に色々なご意見がいただきましたので、今後の在り方につ
いて、少し考えてみました。
 ※参照 第98号掲載
 →http://blog.livedoor.jp/hrd_net/archives/40573825.html

 キャリアカウンセリングという言葉が注目され始めたきっかけの一つとして、
リストラやのアウトプレースメントサービス進展と共に進められた取組の一つ
であることは過言ではないと言えます。今現在でも、キャリアカウンセリング
で私のところに相談が寄せられるケースも、リストラやアウトプレースメント
の進行と絡む内容のものがほとんどです。リストラやアウトプレースメントの
手段としてのキャリアカウンセリングは、対象者の方々が会社を離れ、次の職
業人生を考える際のソフトランディングを行うものとして利用されるものです。
 リストラやアウトプレースメント場面でのキャリアカウンセリングは間違い
とは言いませんが、どちらかと言うと対処療法的なものであると言えます。

 本来キャリアカウンセリングとは、自立した社員の育成を支援する仕組みで
あると言えます。そのためには、対処療法というよりも予防・先取りした準備
である方が望ましいと言えます。個人が主体的に自分のキャリアを考え、会社
から与えられる、または会社から与えられなくても、自ら活躍する場を創って
いくことを支援すべきものであると考えます。
 中には、自立した社員というのは、自らのキャリアについても自分で考える
ことができる人だからそういうものは必要ないという意見もありますが、それ
は恐らくごく一部の優秀な方のことで、逆にその優秀な人材を必要な人数揃え
るだけの魅力がある会社かどうかということも考えていかなくてはなりません。

 少し長い視点で見れば、絶対的な労働者人口の減少に伴い、恐らく現在IT
分野で起こっているような人材不足があらゆる分野に波及することが予測され
ます。やるべき、やりたい事業はあるが人材がいないという状況です。
 現在は、終身雇用の崩壊など雇用の保証が無くなりつつある面ばかりが注目
されますが、逆に言えば、これからは、いかに自社にとって必要な人材を残す
かを真剣に考えなければならない時代に突入したとも言えます。
 適切な表現ではないかとも思われますが、リストラなどで注目を集める企業
から人材を放出する場面でのキャリアカウンセリングだけでなく、優秀な人材
を企業へ吸引、求心力を持たせるキャリアカウンセリングが必要になると考え
られます。
 その中でのキャリアカウンセリングの位置付けは、個人のキャリア形成と企
業の事業展開の中で求められる能力の擦り合わせ行う場であり、個人側から見
ればその会社で働くことの意味を認識する場であると言えます。

 今後のキャリアカウンセリングには、何かあった時に利用されるものでなく、
いつでも開いていて、気軽に立ち寄ることができ、欲しいものが準備されてい
る、コンビニエンスストア的な要素が求められるでしょう。カウンセリングと
いう言葉そのものに治療的なイメージが感じられますが、そうではなく、個人
がどんな時でも組織や企業との関係・関わりを確認する「よろず相談所」のよ
うな場になることが必要になるでしょう。そのためにはカウンセリングに代わ
る言葉が必要かもしれません。
 いずれにせよ、個人と企業が共に発展する関係を構築するために個人の方々
が自らのキャリアについて、考えたり、相談したりする場が必要ではないでしょ
うか。


             (2000/10/09 人材開発メールニュース第108号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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