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キャリアカウンセリングへの期待
 先週の人材開発Newsでも紹介させていただきましたが、労働省より「今
後の職業能力開発の在り方研究会」の報告が発表されました。

●今後の職業能力開発の在り方研究会 報告
→http://www.jil.go.jp/kisya/noryoku/20000712_01_n/20000712_01_n.html

 この報告書では、経済社会の変化がもたらす労働市場への影響、それに伴う
職業能力開発の在り方、今後推進すべき職業能力開発施策などが報告されてい
ます。
 この中で、今後推進すべき施策の一つとして個別的なキャリア形成を支援す
るための体制の整備が取り上げられています。企業サイドにおける人材像、職
務の多様化、労働者サイドの就業意識の多様化のすり合わせを行う方法として、
個別的なキャリア形成を支援する仕組みが必要であると言われています。
 具体的には、労働者が能力を「知る」仕組みの整備、労働者に能力を「知ら
せる」仕組みの整備、労働者のキャリア形成を支援する仕組みの整備が必要で
あり、企業が必要とする「人材像」を労働者に提示した上で、企業のニーズと
労働者の希望・適性・能力を照合し、キャリア形成の具体的方向と職業能力開
発の方針を確定させること(キャリア・コンサルティング)が必要であり、こ
うした職務に専門的な能力を有している者を配置することが望ましいと報告さ
れています。

 同じ様なことが、私がお手伝いさせていただいている仕事の一つとして現れ
てきています。今年の春より、ベンチャー企業を支援する会社から、ベンチャー
企業に必要な人材育成サービス開発について企画の依頼を受け、一つは採用時
の適正テストの開発、もう一つは入社後の定期的なキャリアカウンセリングプ
ログラムの開発を進めています。
 ベンチャー企業(特に従業員規模が少ない企業)においては、期待される職
務の変化が激しいこともあり、従来のOJTや集合研修という方法が機能しな
いケースがほとんどです。むしろ研修などを実施するよりも、経営方針や経営
状況に応じて、個別にキャリアの棚卸やキャリア開発の目標設定などを定期的
に進めていくことが有効であると考えられます。(逆に言えば、従業員規模が
少ないほど、個別対応がしやすい。)経営の期待と自分の仕事を定期的にすり
あわせる場を設定することで、個人としてのエンプロイアビリティを高めると
ともにそれを企業の成長につなげることが望まれています。

 環境変化のスピードが早くなればなるほど、企業内における職務の変化のス
ピードも早くなります。社員一人一人に期待される役割も変化が生じ、そのこ
とが社員に認識され、変化に対応した行動を行えるかが企業の成長のスピード
を決定する重要な要因になると考えられます。人材開発の現場も同様です。経
営に必要なキャリアを企業内に保有しているのかを把握したうえで、不足して
いる場合は社内外を問わず、どこから、いつまでに調達するのかまたは開発す
るのかを計画、実現することが人材開発担当部門の大きな役割になると考えら
れます。
 今後は企業規模にかかわらず、企業側が期待する現在、将来のキャリアと個
人側が保有、開発しようとしている現在、将来のキャリア、双方のコミュニケー
ションを図ることが、企業内の教育担当者の重要な役割になると考えられます。
キャリアコンサルティングを行う場としてのキャリアカウンセリングへの期待
が高まることが予想されます。


             (2000/07/24 人材開発メールニュース第98号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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