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パート社員の戦力化
 流通小売り・サービス・外食産業では、いつの時代においてもローコストオ
ペレーションが追求されています。特に最近では、パート社員の戦力化に力を
入れている企業が多いようです。具体的には、パート社員にも業務改善を中心
とした目標管理制度を導入し、業務改善目標の達成度に応じて、賃金や処遇と
リンクを図る企業が増えています。
 しかし、こうしたパート社員に目標管理制度を導入した企業において、運用
がうまくいかないという声を聞くことが多いようです。そこで今回は、人材開
発の観点から、「パート社員の業務改善を成果に結びつけるには何が必要か」
考えていきたいと思います。

 パート社員の戦力化が上手く行かない原因を探る場合、2つの見方がありま
す。一つは業務改善目標を立案し、実行するパート社員へのアプローチ、もう
一つは業務改善行動を評価、支援する組織・管理者へのアプローチです。
 パート社員のアプローチでは、成果の有無や達成度が評価できる目標づくり
ができているかが重要になります。パート社員の場合、各人により勤務条件が
異なることも少なくなく、また目標管理という考え方に対する適応力を考慮す
れば、従来の社員に対する導入指導よりも、きめ細かい目標づくりまた計画づ
くりに対する指導が必要になると言えます。目標管理制度導入することの意味
やパート社員の方々への期待を十分に説明することも必要です。当たり前のこ
とですが、具体的な目標と計画は、管理者の進捗管理を助け、進捗状況に応じ
て管理者、パート社員が相互にコミュニケーションをとることで、より高い成
果を生み出すことができます。パート社員、現場責任者双方において、より具
体性の高い目標・計画づくりが必要である言えます。
 組織(管理者)へのアプローチでは、現場の責任者にパート社員の戦力化の
重要性を十分に認識してもらうことが必要です。経営トップ層が考えている
「パート社員の戦力化の必要性」と現場の責任者が考えている「パート社員の
戦力化の必要性」にギャップを感じるケースが数多くあります。現場の責任者
(管理者)は、パート社員の戦力化以外にも、様々な面において成果を挙げる
ことを求められています。同時並行で様々な課題を推進していかなければなり
ません。複数の課題が存在する中で、会社側が要求している優先順位と、管理
者が想定している優先順位が食い違っていることは、よくあることです。会社、
組織として、現場責任者にパート社員の戦力化の優先順位がどの程度なのかを
きちんと提示することが必要です。運用がうまく行かないという企業において、
特に後者のアプローチを徹底することが、有効な場合が多いようです。また、
パート社員の業務改善の成果を現場責任者への評価とリンクさせることも必要
です。

 現場レベルでパート社員への目標管理制度を導入するのと同様に、企業レベ
ルでパート社員の戦力化を進めることにも、確固たる方針と具体的な目標、計
画が必要であると言えます。経営側の現場に対する、中途半端なパート社員戦
力化の要請は、かえって現場を混乱させることにつながります。パート社員の
戦力化には、ある程度の時間が必要です。短期的には、現場への徹底や、パー
ト社員への指導に時間がかかり、オペレーションの効率が低下すること予測さ
れます。会社としてどの程度本気でパート社員の戦力化を進めていくかを具体
的に現場に示し、1年程度のスパンの中で、具体的にどのレベルまで進めてい
くかを現場の責任者と共に考えていくことが、まず必要ではないでしょうか。


             (1999/09/27 人材開発メールニュース第57号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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