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変化する管理者の役割
 マネジメントはトップ、ミドル、ロワーの3つに区分できます。トップとは経営
者を含めた経営の最終責任を負う立場のマネジメントです。ミドルはトップが示し
た理念・ビジョンを実現するための戦略を推進するマネジメントです。ロワーは現
場の中でメンバーと一緒に目標を達成するマネジメントです。管理者という意味で
のマネジメントは、厳密にはミドルとロワーを指します。ただ、組織図に従えば、
トップとロワーの位置づけは明確ですが、ミドルはトップに近いものからロワーに
近いものまでかなり大きな幅を持っています。それだけにミドルをどう捉えるか、
我が社におけるミドルはどの層を指すのかということは、組織の重要なテーマにな
ります。

 ミドルマネジメントの役割はますます重要になります。いくらトップが高い理念
やビジョンを示したとしても、一般社員はそのことが自分にどのような意味を持つ
のか十分に理解できるケースは少ないと言えます。
 ミドルの重要な役割のひとつは、トップの想いを自分の言葉に変えメンバーにわ
かりやすく伝えることです。「伝える」とは、ただ話すことでなく、意味を共有す
るということです。もう一つ重要な役割は、その実現のための戦略を創り、実行の
推進者としてメンバーを力強く引っ張っていくことです。ミドルは、意味の翻訳者
であり、戦略の実行推進者といえます。

 これからの管理者は組織変革の担い手として、次のような要件が必要になります。
 ○上から与えられる戦略とは別の、自分なりのビジョンや志を持つこと。
 ○組織図や職務権限にとらわれず、組織内外をうまく立ち回り、資源・情報・支
援を動員すること。
 ○それらを行うためのオペレーション上の詰めを怠らないこと。
 ○知的思考と静かな持続力を備えていること。

  これからの管理者は、上(上位管理者)や横(他部門)に対して強い影響力を持
つことが求められます。そしてそのことが下(部下)への影響力の源泉になります。
単なる上位者のメッセンジャーではなく、自分の言葉に置き換えて意味を正しく伝
えることができる翻訳者であり伝道者でなければなりません。さらに時には上位の
指示がおかしいと確信した場合には、部下を守るために闘う防波堤になることも必
要です。
 予測不可能な環境下では、事後調整を中心とした日本的なマネジメント(管理機
能)の精度を高めるだけでは十分に管理者としての役割を果たすことはできません。
 これからはむしろ、リスク管理を含めた事前予測・計画を中心としたリーダー、
プロデューサーとしての役割が求められます。


             (1998/11/30 人材開発メールニュース第16号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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