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公開セミナー(外部派遣研修)の活用法
 公開コースと言っても、その幅は実に広い。公開といっても会員企業に限定して
いるものから、完全な一般公募のものまで様々である。日程も半日程度のものから
1年間にわたるものまである。内容、程度となればそれこそ千差万別と言える。
 公開セミナー派遣のメリットは、第一に研修対象者が少人数のときの費用面での
効果があげられる。研修対象者が少なければ、社内で講師を呼んで実施するよりも、
公開コースに派遣した方が、コストが少なくすむケースが多い。また少人数の場合、
社内で行っても研修としての雰囲気が作れなかったり、グループ討議などの研修手
法が使えないことも多い。第二に他社との混合研修であるため、職場内では得られ
ない刺激を受けたり、視野の拡大、情報交換などが行えるメリットがある。

 特に、中小企業では、どうしても研修対象者が少なくなってしまうため、公開セ
ミナーに依存する傾向が強い。ただし公開セミナーは、多数の企業が参加して行う
コースである以上、その内容は各社に共通の一般的なものが中心となる。このこと
は、裏を返せば、企業の個別、具体的なニーズにマッチするとは限らないというこ
とであり、この点は充分に注意しなければならない。企業における人材育成の中心
は社内研修であり、外部機関が行う公開コースへの派遣は、あくまで社内研修を補
完するものとして位置づけるべきである。
 また、公開セミナーの派遣後は、研修内容の評価や効果測定は形として残してお
きたい。報告書や学習レポートの提出を求めるなど、参加者の主観的な評価に頼ら
ざるをえない部分はあるが、“派遣しっぱなし”よりは、今後につながるポイント
はつかめるはずである。

 教育には、「形成としての教育」と「開発としての教育」の2つの側面がある。
形成としての教育は、知識や技術を覚えることで基盤が形成されることであり、開
発としての教育は、形成された基盤をもとに、さまざまな学習方法で自発的に知能
を進ませ、実践的な応用力を身につけることである。
 現在、教育の効果が重視され、いかに実践で発揮するかという点から「開発とし
ての教育」が重視されている。勿論それは重要であるが、開発のレベルは形成のレ
ベルによって決まると言われる。教育担当者は、今一度、自社の形成のレベルを確
認していただきたい。また、これから人材開発を進めていく企業では、マクロ的な
観点から会社全体の知的ストック(社員全体の知識の総量)について、現状はどの
程度か、将来的にどれだけ高めていくかということを考えていかなければならない。

 公開セミナーは、前述の通り、多数の企業が参加するために一般的共通的な内容
を扱うものが、ほとんどである。すなわち、形成としての教育を行うことに向いて
いる。公開セミナーへの派遣に限らず、教育担当者は、教育課題を整理した上で、
形成の時期なのか、開発の時期なのかを考慮し、最適な課題解決の方法を選択して
いかねばならない。また、このような観点から見直せば、どの人を、どのセミナー
に、いつ派遣するのかということが決定しやすくなるはずである。
 より多くの企業、教育担当者が、公開セミナーのメリットや特徴を踏まえた上で、
公開セミナーを有効に活用をされることを期待したい。


             (1998/09/07 人材開発メールニュース第4号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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